知の現場 久恒啓一監修 知的生産の技術研究会編

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知の現場とは?・ご挨拶

見事にちりばめられた知の見本市――はじめに

NPO法人知的生産の技術研究会会長 八木哲郎

この本は2010年で知的生産の技術研究会が創立以来40年になるのを記念して企画したものである。
当会と親しくお付き合いをいただいている先生方に、「知の現場」を取材させてくださいとお願いしたところ、打てば響くようにご快諾をいただいた。
21人の先生方はいずれも、まさに今、圧倒的な輝きを放つ、そうそうたる面々といえる。偶然だが、アカデミズムの先生はお一人としてなく、皆、ビジネスなどの現場から出てこられた、いわば「知の職人」の方ばかりである。
一人ひとり活動分野も経歴も職業経験も個性もまったく違い、視点も方法も千差万別である21人の方々が、自分の生き方、知的生産の技術を惜しげもなく公開してくださったということが、この本のたぐいまれなるところである。読者は一人ひとりの個性を深く味わいながら、自分はこの先生方のどれに近いかを考えればよい。
当会の特別顧問である梅棹忠夫先生が40年前に出版された「知的生産の技術」(岩波新書)は、我が国における「知」の分岐点ともいえるほど革命的な影響を与えた。

一言でいえば、この本以前は「知」は一部の高名な学者や論壇、文壇など、いわば雲の上の一部の人たちの専有物で、本はインスピレーションや才能などの説明困難な名人芸によって書かれ、常人にはできないものだといわれていたが、梅棹先生は、そんなことはない、先人が経験から編み出した「知的生産の技術」を活用することによって、普通の人でもかなりのことができるのだよ、と教えられた。
それからというもの、あっという間に「知」の世界が変わり、ビジネスマンやエンジニアだった人たちが、勉強してどんどん大学教授になったり、本を書いたりするようになった。事実、この本に登場される先生方はほとんど、そのような現場から出られた方々である。
誰もしなかったことを新しくつくり出した人、時代の進展とともに新しい視点からものを見つめ直した人、新しいソフト、ハードを駆使して新しい業績を上げた人、新しい分野に挑戦して切り拓いた人が今、たくさん出つつある。
そういう人たちの成長の自己証明が本だとすれば、この本の中には先生方がどうして本を書くようになったかの道筋や技術が全部書かれてあるといっても過言ではない。この本を読まれる方は、自分はこの21人のどの人をモデルとして採用すればよいかを決めればよいだろう。
21人の本を読むのは大変だが、この本1冊でそれがすむということはすごいことである。したがっていっぺんに読まずに、一日一人ずつ、傍線を引いたり、じっくり考えたりしながら読まれることをおすすめする。

おわりに

NPO法人 知的生産の技術研究会理事長 久恒啓一

現在のNPO法人知的生産の技術研究会が、まだ「知的生産の技術」研究会という任意団体だった四半世紀前に、当時新入会員だった私たちは本をつくるというチャンスに恵まれた。
それは、2年間の準備期間を経て1983年に「私の書斎活用術」(講談社オレンジバックス)という本に結実したのだが、今思い起こすと著名人の自宅の書斎や仕事場を訪問し、自ら質問し、持参したカメラで写真に撮り、原稿に起こすというこの貴重な得難い経験は、今でも私自身の血肉となっていることを実感している。
ご登場いただいたのは、紀田順一郎、加藤秀俊、下重暁子、和泉育子、長谷川慶太郎、植田康夫、高根正昭、藤本ますみ、松本道弘、加藤栄一、小中陽太郎、池中万吏江、河原淳、水木しげる、浜野安宏、小室直樹という当時のトップランナーの先生方だった。
この16人を「書斎派」「仕事場派」「アジト派」「アトリエ派」「デン派」というように、書斎をどのような呼び方をしているかという基準で分類をしてみた。その後、25年以上の年月が経ったのだが、私自身の研究会の長い活動の中でも、最も記憶に残る、楽しい、充実した経験だった。
このたび、「知研」で本を出すという企画が持ち上がってきたとき、自分たちが育ったこのようなプロジェクトを遂行したときに味わう高揚感を、会員たちに経験してもらいながら、「私の書斎活用術」の現代版をつくるという構想が浮かんできた。そのとき最初に、『知の現場』というタイトルが決まった。
現代を疾走する知的生産者たちは、どのような『知の現場』で活動しているのだろうか。そして彼らの知的生産の秘密は何だろうか。そういう問いを持ちながら半年ほどで一気に取材を敢行したのだが、結果的に現代の「知」の志士たちの動きが分かる絢爛豪華な内容になったと思う。取材に応じていただいた先生方には深く感謝したい。
年齢は20代から最高齢は103歳の昇地三郎さんまで、また仕事も、作家、経営者、会計士、大学教授など実に多彩なメンバーが揃っており、現代の「知の最前線」を感じていただけるだろう。
生き方、仕事のやり方、情報への接し方、志、人との付き合い方、テーマの選び方、知的(生産のための)技術、道具など、この本には広大で豊かな沃野が広がっている。横断的に読んで楽しむだけでなく、興味を持った人についてさらに深堀りしてみるのも面白いと思う。
この本では便宜上、「知の現場」を切り口に「書斎派の人々」「フィールド派の人々」「出会い派の人々」「場所を選ばない人々」と分けてみたが、「出会い派の人々」や「場所を選ばない人々」は比較的年齢の若い人になった。まだまだ発展途上の若い人や、ITを武器にしている人が多いことが影響しているようである。
改めて全編を読み返してみると、それぞれが明確なテーマを持っている、またそれぞれが「知的生産・私の流儀」といってよい知的スタイルを確立している、そして何よりも人生を楽しむ姿勢がある、そういう感を強くしている。
先日、竹橋の東京国立近代美術館で開催された「ゴーギャン展」で、「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」という名画を観る機会があり感銘を受けたが、今回ご登場いただいた方々は、同じように自分の「これまで」と「今」と「これから」を明快に語っている。誰もが、過去から現在へ歩んできた道のりと、現在から未来へ続く道筋をしっかりつかんでいた。これも共通の特徴といえるだろう。
社会がどのように変わっても、自分を磨き続けることが重要であることは論を俟たない。読者には、この本を自らの成長のための参考にしていただければ嬉しく思う。
最後になったが、この企画を勧めていただいた東洋経済新報社の清末真司編集部長、そして実際に手間のかかる編集を精力的に担当してくださった中村実さんに深く感謝したい。
また、今回リーダーとして活躍した秋田英澪子さんをはじめとするプロジェクトの体制と18名の参加者を以下に記し、感謝のしるしとしたい。

【プロジェクトリーダー】
 秋田英澪子(事務局長)

【図解作成】
 横野洋卯子(仙台支部長)

【ビデオカメラ撮影】
 幅 健一(東京本部)

【原稿添削指導】
 近藤節夫(日本ペンクラブ会員・知研永年表彰会員)

【アメリカ・ロサンゼルスにおける松山真之助先生の取材(参加協力)】
 八木完治

【プロジェクトメンバー一覧(参加支部別)/取材・編集・音声記録・写真撮影】
知研・札幌支部(岩瀬晴夫・松本伸之)、同仙台支部(横野洋卯子)、同東京本部(八木哲郎・久恒啓一・秋田英澪子・小林尚衛・近藤節夫・水谷弘隆・丹下 明・幅 健一・遠島啓介・田村修一・蓑島和浩・池中万吏江)、同関西支部(溝江玲子・諏訪仁)、同福岡支部(常富博史)総勢18名(いわき・日立支部と東海支部・岡山支部については、近隣の取材先がなかったため、今回のプロジェクトには参加者の記載はありません)

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